発注点とは?適正在庫・安全在庫・補充点との違いや計算方法、タイミングのポイント
1 発注点・発注点管理とは?
発注点(英語:Ordering point)は、在庫管理において重要な概念の一つです。
発注点は商品の再補充が必要となる在庫の最小数量を指します。
在庫が発注点以下になった場合、商品を補充するための発注が行われます。
在庫発注は、供給チェーンを円滑に継続するために欠かせない工程で、適切な発注点の設定と効率的な在庫発注プロセスが重要になります。
では発注点と同義に捉えられがちな「補充点」との違いは何でしょうか?
発注点は上記の通り、「在庫の最小数量を示し、商品の発注タイミング」を意味します。
一方、補充点は、発注する際の発注量を定めるために現在の有効在庫と発注量との合計として設定された数量を意味します。
最大在庫量に同様の意味合いで、ロケーションスペースの容量などによって決められるものです。
※有効在庫:実在庫に加えて発注残及び引当済みの量(引当量)を考慮した実質的に利用可能な在庫量。
( 有効在庫=手持在庫−引当量+発注残 )
発注点は再補充のタイミングを決める指標であり、補充点は発注量を決めるための指標です。
発注点と補充点は異なる概念であり、それぞれが適正な在庫管理をのために重要な役割を担っています。
正確な発注点と補充点の設定により、効率的な在庫管理を実現し、適切な商品の補充を行うことができます。
2 安全在庫とは?適正在庫とは?
●安産在庫とは
安全在庫とは、需要予測の誤差やサプライチェーンの問題に対応するために確保される在庫数量です。
事業者は安全在庫を設定することにより、需要の変動や供給の不確実性に対処するバッファを作ります。
安全在庫はリスク管理の観点からも重要な要素であり、需要予測の精度や供給リードタイムに応じて適切な数量の設定が必要です。
適切な安全在庫の維持が、ビジネスの円滑な運営と顧客満足度の向上に貢献します。
●適正在庫とは
適正在庫とは、顧客の需要を満たすために必要な在庫数量を指します。
適切な在庫量を維持することで、事業者は需要の迅速な対応やサプライチェーンの効率化を実現することが出来るのです。
適正在庫の設定は、需要予測や納入リードタイムの変動などを考慮して行い、在庫が適切に管理できると、生産や販売プロセスのスムーズな運営が可能となり、在庫コストの最適化にも繋がります。
一方、在庫不足や過剰在庫の問題は、顧客の満足度や企業の収益に悪影響を及ぼす可能性があります。
適正在庫の確保は、需要と供給のバランスを保ちながら、効率的で持続可能な事業運営を実現するために欠かせない要素なのです。
これらを簡単にまとめると、欠品のリスクを回避するための最低限の設定が「安全在庫」で、利益を目的とした最大限の設定が「適正在庫」となります。
●発注点と安全在庫・適正在庫の違いとは?
発注点、補充点、安全在庫、適正在庫と似た意味に捉えられがちのものも
下図をみればその意味や違いが分かります。
発注点 :安全在庫から考える次回商品の納品を考慮した最低限の在庫数量
補充点 :適正在庫から考える発注の際に必要な数量
安全在庫:欠品を防ぐための最低限の在庫数量
適正在庫:安全在庫から最大限利益を目的とした抱えるべき在庫数量
3 発注方法は大別すると4つ
●4つの発注方法
上記の様に大別すると4つの発注方法があります。
それぞれにメリット・デメリットがあり、商品や業界の特徴に合わせて決める必要があります。
定期定量型
〇管理運用が簡単で発注プロセスを自動化できる
×需要変動が大きいものは欠品のリスク
食品資材、医療機器、事務用品、建築資材などに比較的向いています。
定期不定量型
〇需要変動にも対応でき在庫コストの適正化が可能
×都度発注数量を考える手間と予測誤差に対するリスク
衣料品、高技術製品、イベント用品、季節物などに比較的向いています。
不定期定量型
〇需要の予測が難しい場合や需要パターンが不規則な場合に柔軟に対応できる
×不定期な発注により、供給リードタイムや調達の不確実性が発生するリスク
アクセサリー、季節物、新商品の導入、ライフスタイル商品などに比較的向いています。
不定期不定量型
〇在庫最適化の柔軟性があり在庫コストを抑えやすい
×発注プロセスが複雑で運用管理が難しく、供給の不確実性も発生するリスク
季節物、イベント関連、高級品や限定品などの商品に比較的向いています。
4 発注点管理の方式は大別すると【定量発注方式と定期発注方式】の2つ
●定期発注方式
定期発注方式は、事前に定めた一定の間隔で一定の数量を定期的に発注する方法です。
その特徴は周期と数量を自動的に運用することが特徴と言えます。
発注周期:あらかじめ決められた一定の間隔で行われます。
例えば、毎週、毎月、または季節ごとに発注するなど、予め設定された周期に従って
発注が行われます。
発注数量:発注する数量は予め決められた一定の数量です。
需要の予測や在庫の最適化を考慮して、一定の数量を定期的に発注します。
自動化 :定期発注方式は自動化されることが一般的です。
予め設定したスケジュールに基づいて発注が自動的に行われるため、
人的ミスや忘れがちな問題を防ぐことができます。
定期発注方式のメリットとしては下記の5つが期待できます。
1:在庫管理の簡素化
2:需要予測の安定化
3:コスト削減
4:ストックアウトのリスク軽減
5:リードタイムの短縮
定期発注方式の中でも、「定期定量発注方式」「定期補充点方式」「定期発注点補充点方式」があります。
●定量発注方式(発注点方式)
定量発注方式は、一定の数量を基準にして商品を発注する方法です。
その特徴は設定された数量次第で、タイミング、頻度を変えて運用されることが特徴です。
(ダブルビン方式も同様の方式です)
発注数量 :定量発注方式では、あらかじめ設定した数量を基準にして発注が行われます。
例えば、100個や1,000個などの固定数量を発注する場合があります。
発注タイミング:発注タイミングは需要の予測や在庫状況に関係なく、発注数量が達した時点で行われます。
在庫が一定の数量以下になった場合や特定の日付に達した場合など、
事前に設定された条件に基づいて発注が行われます。
発注頻度 :定量発注方式では、発注数量が達した時点で発注が行われるため、
発注の頻度は数量に応じて変動します。
発注数量が多ければ発注の頻度は低くなり、逆に少なければ頻度は高くなります。
定量発注方式のメリットとしては下記の5つが期待できます。
1:在庫最適化
2:発注の容易性
3:コスト効率
4:サプライチェーンの効率化
5:需要の安定化
また、定量発注方式とよく似た方式として、発注点補充点方式があります。
発注点補充点方式は発注点に達した時に補充点を超えるように発注する方式で、定量発注方式よりも急な需要変動に対応できます。
4 発注「点」、発注「量」の計算方法・決め方(求め方)とは?
●発注点・発注量を決めるために重要な3つの要素
発注点・発注量を決めるために重要な3つの要素があります。
それは「平均出庫数量」「リードタイム」「安全在庫」です。
【 平均出庫数量とは? 】
過去の出庫履歴や需要予測を元に算出される、1日の平均的な出庫量です。
これを把握することで、需要の傾向やパターンを理解し、将来の需要を予測する上で重要な指標となります。
≪平均出庫量を求める計算式≫
平均出庫量 = 総出庫量 / 出庫期間
例:1か月間の出庫数量が合計で500個であった場合、出庫期間が30日であれば、
平均出庫量 = 500個 / 30日 = 16.67個/日
【 リードタイムとは? 】
発注を行ってから商品が到着するまでの日数です。
サプライヤーからの製品調達や輸送にかかる間隔・日数、加工や製造に要する日数などを考慮します。
≪リードタイムを求める計算式≫
リードタイム = 納品日 - 発注日(の経過時間)
例:発注日時が2023年6月1日で、実際の到着日時が2023年6月10日だった場合、
リードタイム = 2023年6月10日 - 2023年6月1日 = 9日
【 安全在庫とは? 】
前述している通り、需要予測の誤差やサプライチェーンの問題に対応するために確保される在庫数量です。
安全在庫は需要の予測誤差やリードタイムの変動に対する保険となり、需要の変動の程度やリードタイムの変動幅に応じて適切に設定します。
≪安全在庫を求める計算式≫
安全在庫 = 安全係数 × 使用量の標準偏差 × √(発注リードタイム+発注間隔)
例:使用量の標準偏差が10個、発注リードタイムが5日、発注間隔が10日であるとします。
また、安全係数を1.5とします。
安全在庫 = 1.5 × 10個 × √(5日 + 10日) = 58.05個
※安全係数:在庫管理において欠品を許容する度合いを示す指標です。
一般的によく使われる安全係数は1.2~1.6です。(欠品許容率5~10%)
安全係数が高いほど、需要の変動やリードタイムの不確実性による在庫不足リスクを考慮した
保守的な在庫レベルが確保されますが、在庫コストが増加する可能性を含むことになります。
安全係数計算式(安全係数 = (在庫保有期間における需要の標準偏差)/(平均需要))
これらの要素を総合的に考慮し、平均出庫量に基づいてリードタイムと安全在庫を加味した発注点と発注量を決定することで、需要の不確実性やリードタイムの変動にも柔軟に対応できる効果的な在庫管理が実現します。
●発注点、発注量を決める計算式
≪発注点計算式≫
発注点 = (平均出庫数量 × リードタイム)+ 安全在庫
例:1日の平均出荷量が50個、リードタイムが10日、安全在庫が30個の場合
発注点 = (50個 × 10日)+ 30個 = 530個
≪発注量計算式≫
発注量 = 発注点 - 現在の在庫量
例:発注点が500個、現在の在庫量が200個であるとします。
発注量 = 500個 - 200個 = 300個
5 「発注」業務で大切な5つのポイント
1:在庫管理業務をルール化(統一)
発注には正確な在庫情報が必要です。
在庫数や売上データを適切に収集・分析し、需要予測を行うことが重要です。
また、在庫の管理や保守も欠かせません。
在庫の正確な数値や品質の管理を徹底し、適切な時期に発注を行うことが求められます。
2:発注ルールの設定
発注には明確なルールを設定することが重要です。
発注基準や発注量の算定方法、発注の手続きなどを明確に定めることで、一貫性と効率性を確保します。
ルールに基づいて発注を行うことで、判断の一貫性やミスの軽減が図られます。
3:統一したプロセスの確立
発注プロセスを統一し、一貫性を持たせることが重要です。
各部門や担当者間での情報共有や連携を図るために、明確なコミュニケーションチャネルや役割分担を確立します。
統一されたプロセスによって、発注の迅速性と正確性を向上させることができます。
4:データの活用と分析
発注には適切なデータの活用と分析が欠かせません。
過去の売上データや需要予測結果、在庫の動向などを分析し、需要のトレンドやパターンを把握することで、的確な発注判断が可能となります。
データに基づく意思決定によって、在庫の最適化と売上の最大化を目指します。
5:継続的な改善と評価
発注プロセスの改善と評価といったメンテナンスを継続的に行うことが必要です。
発注の効率性や制度を向上させるために、定期的な振り返りやフィードバックの活用が必要です。
発注に関わる関係者との協力を通じて、プロセスの改善点を継続し、より効果的な発注体制を構築しましょう。
これらを意識し行うことで、効率的かつ効果的な発注業務を実現することができます。
全てを初めから網羅することは難しいかと思いますので、商品をランク付けして優先度を決める事から始めてもいいでしょう。
また、自社内の運用だけでなくリードタイムの短縮などを検討し在庫の無駄を省く事も大切です。
6 発注点管理の方法【発注カード・エクセル・自動発注
発注点管理は、発注の適切なタイミングと数量を確保するための重要な手法です。
発注点管理の方法、手段の一例をご紹介します。
発注カード:発注カードは、商品ごとに設定された発注点を示すカードです。
在庫数と発注点の差が発注カード上で確認できます。
在庫が発注点以下になった場合、発注を行うための合図として使用されます。
発注カードを適切に管理することで、発注の見落としやタイミングのミスを防ぐことができます。
エクセル : エクセルを使用した発注点管理は、商品ごとの在庫数や発注点を表形式で管理する方法です。
在庫数と発注点の差が計算され、発注が必要な商品を一目で確認できます。
エクセルを活用することで、簡単な計算やデータの集計、グラフ化なども行えます。
自動発注 : 自動発注システムは、在庫管理システムと連携して在庫数や発注点を監視し、
必要な場合に自動的に発注を行う仕組みです。
在庫が発注点以下になった時点で自動的に発注が生成されるため、人的ミスや忘れがちな点を排除し、効率的な発注プロセスを実現します。
在庫管理 : 在庫管理システムを使用して在庫数や発注点を管理する方法もあります。
在庫管理システムはリアルタイムで在庫情報を把握し、必要な時に発注を行うことができます。
在庫数や発注点の設定、発注履歴の確認など、総合的な在庫管理が可能です。
よく現場で用いられる手法は上記の4つです。また、これらの方法を組み合わせることもあります。
例えば、発注カードを活用しながらエクセルでデータを管理し、自動発注システムと在庫管理システムを組み合わせて効率的な発注プロセスを構築することもできます。
重要なのは、自社のニーズや業務フローに合った適切な発注点管理の方法を選択し、効果的な在庫管理を実現することです。
7 ネオロジのアウトソーシングで出来る事
「発注」については商流の一部として大事な業務となります。
物流事業のアウトソーシングをお受けしているネオロジスティクスでは、商流における業務を担う事は基本的にありません。
ただし、物流の上でも大切な「在庫管理」においては、現場にて運用している自社開発のWMSで情報を蓄積していますので、在庫管理業務を通して、蓄積された情報を分析し、適正化のためにご協力することが出来ます。
過去にも過度な発注で倉庫内の物量が溢れた際、過剰在庫の状況を事業者様と定期的な分析とレポーティングを通して、
適正在庫を目標にご一緒に改善させて頂いたケースもあります。
物流業務をアウトソーシングすることで、身近に商品(在庫)が無いために倉庫内の状況を把握する事は非常に難しいことだと思います。
その改善のために、単なる作業代行に留まらず、事業者様の物流部門として意見させて頂き、皆様と共に改善と適正化に努めています。
「ネオロジ」の物流アウトソーシング
ネオロジスティクスの物流アウトソーシングでは【決まった形】はありません。
皆様のご事情に合わせて、皆様が求める形、改善を踏まえた形に御社の「物流事業部」として役割を担います。
お悩みの事も多いかと思いますが、まずは一度お気軽にご相談ください。
【物流のチカラ】が【事業のチカラ】となります様、精一杯尽力させて頂きます。
《大阪での物流アウトソーシングは株式会社ネオロジスティクス。お問い合わせはお気軽に!》
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